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 まずは、17年間に渡る事務局長としての大西さんのご尽力に感謝の意を表しておきたい。その後を襲うことは正直荷が重い。が、受け渡されたバトンをしっかりと次世代に伝えていこうと思う。

 さて現在、アマチュア演劇は冬の時代にある。スポーツを例にとっても、フットサル、ビーチバレー、三人制バスケット、サーフィン、スノーボードetc、人々の嗜好はきわめて多様化している。また、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)や、AI(人工知能)・アルゴリズム(計算方法)によって、私たちの生にとってのリアリティとは何かが見えなくなっている。さらには、演劇活動を阻害する若者の就業環境や経済状況も重たくのしかかってきていることもある。
 しかし、このような金融資本主義や高度情報社会であればこそ、むしろ、手作り、手仕事、職人の芸がくっきりと浮上する。グローバル資本(ハリウッドやディズニーやブロードウェイ)による独り勝ちの中で、かえって個別性、個体性が重要になってこよう。世界のどこでもどんな時でも、均質で資本力によって万人受けするものよりも、ローカル(特定の場所)で、一回こっきりのもの。ハイテクよりも手間暇かけたもの、プラグを抜いたアコースティックなもの。再現性より一回性、ライブ(なま)でしかありえない身体性こそが我々の生にとってますます重要になってくる。つまり、我々の個的でしかない生を十全に表現しようとすれば、さまざまな演劇的表現しかないということになるのだ。

 高校野球が100回を迎えたということで、ますます隆盛を極めている。プロ野球を支えているのは、地域の少年野球やリトルリーグや社会人野球などの広範な裾野がある。ことほど左様に、脚光を浴びている舞台もこのような地域でのアマチュア演劇人口こそが下支えしているのであり、地域のアマチュア演劇が演劇人や観客を養成する教育機能を果たしていることを忘れることできない。

 劇団協議会とは、一定のイデオロギー(思想)で集まった運動体ではない。あくまでいろいろな演劇思想や演劇観を持ち、ソフトなサークルからハードなプロ劇団まで、集団の編み方もさまざまな演劇集団が構成する、ゆるやかな組織である。だからこそ、兵劇協は、県下で厳しい活動環境にある劇団や演劇サークルが、侃々諤々と演劇観を戦わせたり、切磋琢磨したり、共助したりできるような、そんなセンターやフォーラム(広場)であるべきだ。そのためにも、まずは50周年記念の合同公演『大正七年の長い夏』を起爆剤にして、新たな五〇年に向かって、歩いていきたいと思っている。